優しすぎて損をしてしまう自分へのお守り ── 自分との関係性をつなぎ直す旅路
小さな冊子『「優しすぎて損をしてしまう」自分へ』を手にしてくださり、本当にありがとうございます。


日々のはやい重力のなかで、呼吸は、今、浅くなってはいませんか。
まずは、ここで一度、肩の力を抜いて、深く息を吐き出してみていただけるでしょうか。
今日、一緒に見つめたいのは、ずっと、胸の奥に抱えてこられた「どうして、こんなに生き辛いのだろう」という、静かな問いの手触りです。
社会に出ると、私たちは理不尽な現実にたくさん直面します。
声の大きい人の意見ばかりが通り、 平気で嘘をついたり、人を出し抜いたりする人が要領よく得をして、 優しくて真面目なあなたばかりが、周囲の面倒な仕事や、誰かの不機嫌の尻拭いを背負わされてしまう。
そんな毎日のなかで、ふと、「自分が弱いのかな」 「もっと、ずる賢く、要領よく生きなければいけないのかな」 と、自分の在り方を疑ってしまったときはなかったでしょうか。

三十年という月日、傷つき、遭難しかかっている多くの魂の声を聴き続けてきました。
そのなかで確信している、ひとつの真実があります。
生き辛さを感じているのは、心が弱いからでも、社会を生き抜く能力が足りないからでもありません。
誰よりも「誠実」に生きてきた、何よりの証拠です。

この「誠実さ」と「共感性」の高さこそが、武装を持たないまま、無防備な遭難へと導く原因になってしまう場合があります。
誠実であるということは、相手の言葉や感情を「真に受けてしまう」ということかもしれません。
他人が放った心ない一言や、不機嫌な態度を、フィルターを通さずに、自分の命の器の中にそのまま受け止めてしまう…
そして、「自分が、何か悪いことをしただろうか」と、内省の刃を自分自身に向けてしまう…
いわば、泥棒が多い地域で、玄関の鍵をすべて開け放したまま、大切な家財を守ろうとしているような状態です。

これでは、どれだけ心優しい人であっても、命が擦り切れてしまうのは当然なのです。
感じてきた生き辛さは、間違っているから起きているのではありません。
「不誠実な世界の重力」と、「あなたの清らかな誠実さ」がぶつかり合ったときに生じる、正当な摩擦熱なのです。
ですから、どうか要領よく生きられない自分を、もう責めないであげてください。
ずる賢くなれないのは、魂が、自分の美しさを裏切ることを拒否しているからです。
今、必要なのは、自分を無理に変える「操作(Doing)」ではありません。
その美しい誠実さを保ったまま、外側の世界の悪意や過剰な期待から自分を…
そっと、隔てるための「心の鍵(境界線)」の引き方を、少しずつ思い出していくことです。

その地図は、これからの旅路のなかで、一緒にゆっくりと編み直していきましょう。
今日のところは、ただ、 「私は、世界に対して誠実に生きようとしてきたんだな」 と、その傷だらけの両足を、優しく撫でてあげるだけで充分です。
この図書室の窓辺は、いつでも同じ静けさで佇むのを待っています。

鍵のないポスト ── 自分への手紙を置いておく場所
※この場所は、あなたの言葉をただそのまま、誰にも汚されずに置いておくための「静かな引き出し」です。
司書がすべて大切に目を通させていただきますが、個別のお返事は届きません。
お返事を待つという新たな焦燥(サバイバル)から離れ、どうぞあなたの心に嘘のない言葉を、ここにそっと置いていってください。
夜明けの図書室・司書
村田 敦(つとむ)



